ISISはなぜ市民の殺害を好むのか?ー宗教型テロリズムの厄介な特徴
こんにちは、ネコテックインダストリー対テロ調査チームアナリストの桃井です。
昨日パキスタンのラホールにてタリバンによる爆弾テロがあり70名以上の死傷者を出す大惨事となりました。
このタリバンやタイトルにあるISISはなぜこうした市民を殺害する自爆テロや銃撃を好むのでしょうか。そこには宗教型テロリズムの厄介な特徴があります。
それはテロを起こして人々を殺害すること自体を目的としているためです。
そもそもテロリストは大きく分けて民族型、イデオロギー型、宗教型の3つのタイプに分けることができると考えられています。テロ研究の権威であるホフマン氏(Bruce Hoffman)はこれを以下のようにまとめています。
宗教型(Religious Type)
「神の意志」を掲げ敵対する人員の殺害を正当化する傾向が特徴で他のタイプとはここが大きく異なる。目的も「反〜」といった価値やおおよそ達成不可能で非現実的なものが多い。近年特定の国籍や宗教の人物を上記「神の意志」として殺害すること自体を目的としている組織が多く、こうした組織との和平交渉は困難を極める。該当する組織としてはISIS、アルカイダ、タリバン、オウム真理教等。
民族型(Ethno-Nationalism Type)
特定地域からの分離独立等最終的な目的が明確。テロリズムはあくまでも手段であり世論に敏感な面もあるため必ずしも殺傷ありきのテロを好むわけではない。その反面自分たちの大義を世界的に知らしめるための大きなテロを画策する面もある。IRAやLTTE等が該当する。
イデオロギー型(Ideology Type)
政治的イデオロギーに基づいてなされるテロリズムで自分たちの大義を世界的に知らしめ理解してもらうことを重要と認識している。そのため宗教型のように殺傷自体を正当化する方針とは距離を置いているとされる。人質を取り同胞の解放を要求する等テロ自体が目的ではないことが多い。連合赤軍やドイツ赤軍等が該当する。
こうして見てみると宗教型のテロリストは「神の意志」であるとして殺害を正当化あるいは、殺害自体を目的化する傾向があります。他の2タイプに関してはテロはあくまでも手段の場合が多くまだ交渉等が成立する可能性もありますが、ISISを始めとする宗教型テロリストとの交渉は困難であることがお分かりいただけるかと思います。
また、他のタイプのように世論を味方につけようとする傾向もなく、活動の最終目的もあいまいであったり、非現実的であるため際限なくテロを続けようとする傾向があります。こうしたことも過激化する要因として挙げることができると思います。
それでは、上記3タイプのテロリストに対して民間企業あるいは個人はどのように対応すべきなのでしょうか。次回はこうしたテーマを取り上げていきたいと思います。
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